カッコーの巣の上で (One flew over the cuckoo's nest)

三十年以上前のアメリカ映画.

演出自体は殆どが屋内(精神病院)ということもあって比較的地味.そのかわり主人公役のジャック・ニコルソンの演技が目立ってた.
その主人公R.P.McMurphyは刑務所のwork detail(労役?)から逃れるために精神病を偽っているのではないかと刑務所側が疑い,最終的な判断を精神病院側にしてもらうため精神病院に送られてくる(本人は表向き否定している).そこで他の患者たちとギャンブルしたり看護婦長Ratchedに自分の意見を遠慮なくぶつけ本能の趣くまま行動していく.Ratchedは無感情で機械のように喋る.理性的で時に冷淡にさえ映る看護婦.
理性的な人と本能的な人が物語の中心にいて他の患者たちが段々本能的なMcMurphy側に傾いていくが…という話.本能的と言うと聞こえが良くないが人間的な感情を持つようになったということ.最初はミーティングセラピーの時どの患者も自分から意見を言うことができなかったのだ.

McMurphyは最終的にロボトミー(前頭葉に傷をつける手術)をされて無感情な廃人同然の姿になり,患者の一人Chiefによって安楽死させられる.Ratched最後の登場シーンでは患者に対して自然な笑顔で声をかける.最後はMcMurphyを殺したChiefが,McMurphyが一度やろうとして失敗した方法で(水道台を持ち上げて窓に投げつけて突き破る),脱走するシーンで終わる.

Ratched(病院側)と,McMurphyは,どちらも両極端な者同士なのでどっちの価値観が善か悪かという判断は難しい.とはいへ少なくともこの映画の中で何人かの患者(Ratchedも?)はMcMurphyとの関わりによって明らかに症状が改善するように描かれている(「改善」だと思うのは僕がMcMurphyよりの人に好意的な印象を持つからかもしれない).決定的なのは吃音の患者が最後にRatchedに対して吃らずに返答するが,直後にRatchedの脅しによって再発,そして自殺する.

題名からして色々と暗喩のある深い映画だと思う.